File No.2 3D体型シミュレータ -未来から“理想の自分”がテレポート?
「STARTREK」などのSFドラマ/映画につきものなのが、ワープ(超光速飛行)やテレポーテーション(転送)だろう。実際に場所を移動できるわけではないが、未来の“理想の自分(体型)”を見るための開発が進んでいる。日本ユニシスらが取り組む3D(次元)体型シミュレータだ。理想像を脳裏に焼き付ければ、本当にその姿になれるかも!?
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081226/322080/
図1●3D体型シミュレーションの例
画像提供:日本ユニシス・浜松ホトニクス
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だれもが知っている、ドラえもんの「どこでもドア」も、テレポーションの一種。それほどに、「私も素敵なところへ行きたい!」という想いは、老若男女を問わず共通なのだろう。とはいえ、現実にはまだまだ無理な話。ただ、シミュレーション技術を使えば、過去や未来の自分と対面することができる。中でも、全身像を3D(次元)画像で見せてくれるのが、日本ユニシスが開発中の「3D体型シミュレータ」である(図1)。現在の体型データを元に、例えば「体重を10kg減らせた場合の体型」などが確認できる。
未来の姿を明確にイメージすることは、目標達成に有効とされる。若手ビジネスマン/ビジネスウーマン向け雑誌など流行っている、「やりたいこと、なりたいことを手帳に書こう」といった特集をみれば、目標を手帳に書けば社長にだってなれるようだ。メタボリック症候群対策においても、ウエスト85cm以下(女性は90cm以下)だとか、体重何十kg以下と、数値だけで目標管理するよりも、全身像をみられれば、「おお、こんなに格好良くなれるなら、少しは頑張ってみようかしら」と思える。これがきっと、目標を“見える化”することの効果なのだろう。
しかしである。3D体型シミュレータにおいて、最も動機付けの力が強いのは、将来の理想像よりもむしろ、“現時点”の体型そのものだ。3D体型シミュレータの開発プロジェクトを牽引する日本ユニシスの碓井聡子ビジネスデベロップメントセンタービジネス推進室(ヘルスケア事業担当)マネージャーは、「数値による“見える化”は頭では分かっても実行できない。3D化によって、感情に訴えることが可能になる。“ショック”のほうが継続的な行動に結びつくのではないか」と考える。
3D体型スキャナーは転送装置の雰囲気
図2●3D体型スキャナーで読み取った“現実”は、かなりショック
[画像のクリックで拡大表示] 実際、自身の3D体型を目にすることは、相当に“ショック”である。後ろ姿はもとより、真横から見た姿、すなわち自分の姿勢を目の当たりにすれば、だれもが少なからずショックを受けるはずだ。実体験した記者も、「メタボな姿をさらすことは仕方がない」と覚悟していたけれど、姿勢の悪さには言葉すら出なかった(図2)。記者を測定してくれたビジネス推進室(ヘルスケア事業担当)の小田原正和主任は後から、「何度か測り直したデータを登録した」と教えてくれたが、先に教えてほしい。
体型の測定自体は至って簡単だ。身体にフィットする下着だけを付け、3D体型スキャナーの中央に、若干足と手を広げて立つだけ。カーテンが閉まった後の薄暗がりの中、「ジジーッ」という音とともに測定部が移動すれば終わりだ(写真1)。この間は、SF映画などで目にする転送装置に入っているような感覚にはなれる。実際、記者の身体は現実世界から、コンピュータという仮想世界に転送されている。
3Dスキャナー自体は、浜松ホトニクスが開発・販売する「ボディラインスキャナ」を使っている。レーザーダイオードが発した光をCCDで受光するセンサーヘッドを4個使い、三角測量法で人体の外形を測定する装置である。
写真1●転送装置の雰囲気が味わえる3D体型スキャナー
エトキ
[画像のクリックで拡大表示] 人体を2.5mm間隔で測定した場合の測定時間はおよそ10秒。大人1人当たりの測定点の数は40万~80万点で、これを、物体表面を三角形の集まりで表現するポリゴンに分割すれば、データ数は13万5000点程度にな圧縮される。データ容量は約10MBになるという。電子メールで送るには大きなサイズだが、ファイル交換サービスなどを利用すれば、容易にやり取りできる。電子化された我が人体だけは、ネット上はどこにでも行けるわけである。
異性からみた印象評価もミュレート
3Dスキャナーは、これまでも下着メーカーやスポーツ用品メーカーなどが、商品開発用途で利用されてきた。しかし、その利用方法は、素材や形状などを企画・開発するための研究的な使われ方が中心で、不特定多数の体型を測定する用途などには使われた例はないという。今回、日本ユニシスは、この3Dスキャナーと3D体型シミュレーションの仕組みを、まずはメタボリック症候群に象徴される健康増進分野から応用したいと考えている。
その実証実験として、千葉県柏市の柏の葉地域において、住民参加型の「柏カラダすっきりプロジェクト」を、2008年9月から始めている。約100人の住民モニターを募り、体型を測定するほか、共同参加する下着メーカーのグンゼが開発中のオーダーメード型タイツ「パワータイツ(仮称)」を着用してもらい、数ヶ月後に改めて3Dスキャナーで体型を測定し、その着用効果を数値化する。2008年末までに1回目の測定が終わり、住民はパワータイツを着用して年末年始を過ごしてきた。
この際、モニターが健康下着の着用や健康維持のための運動などを継続してもらうために、3D体型シミュレータによる“実像”と“理想像”を活用する。具体的には、現状データを元に、当面の目標を達成できた場合の体型や、自身が理想とする体型をシミュレーションして提供する。また、異性から見た印象による評価シミュレーションも計画している。「太っている」「がっしりした」「すっきりした」といった印象を数値化し、異性から見られたい体型をイメージするのだという。
柔らかな身体の内側をどう計算するか
これらのシミュレーションを可能にするために、日本ユニシスでは現在、身体の内側を表現するための計算式を作成・検証している。身長が同じであっても体型は異なるし、同じ人物であっても20代、30代、40代と年齢を重ねるに伴って体型は変わる。体重を同じだけ減らしても、骨太な人、筋肉質な人、いずれでもない人などで、体型が変わりやすい部分、変わりにくい部分は異なる。こうした“でこぼこ”をどう吸収するかに挑んでいるわけだ。
骨太や筋肉質などの判断は、3Dスキャナーによる体型データと体重など、比較的容易に測れるデータがよりどころだ。CT(コンピュータ断層撮影)スキャナーやMRI(磁気共鳴画像装置)など、身体の内側を測るために開発された装置とは比較にならないものの、体型データからでもある程度は身体の内側が判断できる可能性もある。体型データの測定と同時に、なにがしかの身体の不調が早期発見できるなら、それこそ健康増進にうってつけな仕組みといえる。
3D体型データは、多種多様なことに利用できる。碓井マネージャーによれば、実証実験にあるようなオーダーメードの下着の作成はもとより、オーダーメードの洋服や靴の作成。さらには、座り心地がなによりしっくりくる自分専用の椅子や枕、炊事作業が楽になるシステムキッチンの高さの決定などが考えられる。いずれも「自分専用」の世界が広がっている。
オーダーメードで服を仕立てるなどは贅沢なことだが、海外に目を向ければ、もっと著名なテーラーだっているだろうし、あるいは逆に比較的安価にオーダーメードができる地域もある。彼らが3D体型データに対応してくれるのなら、実際に現地に移動しなくても、体型データを送信すれば、ぴったりとフィットする服が届くことになる。実体験はできないけれど、体型だけは目的地に“転送”され、目的を達成できる時代が近づいているようだ。
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(志度 昌宏=EnterprisePlatform編集長) [2009/01/07]
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